ひでちゃんのこと。
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『白鳩』3月号30〜31ページ
出会いを聞かせて
[タイトル]
愛知と東京の
遠距離恋愛が始まる
飯田芳実
第3回
[本文]
無事に仕事も決まって、宇治別格本山の研修生を卒業する私に、彼は残念そうな表情で、
「本当に帰っちゃうんだね」
と言いました。
私は、あまりにも大げさに残念がる彼の様子にとまどいました。もちろん私も研修生の仲間と離れるのは寂しかったのですが、やっと自立して社会へ出られる喜びの方が大きかったのです。
最後に、研修生の仲間一人ひとりのメッセージが書かれた小さなノートを受け取りました。それぞれのあたたかなメッセージに感動しながら読んでいると、最後のページに彼からのメッセージが書かれていました。
「芳実ちゃん、あなたにはいつも癒やしと元気をもらいました。あなたは僕の天使です。本当にどうもありがとう。だから帰ってしまうのがものすごく寂しい。もっと一緒にいたい。でも心から応援し、幸せを祈っています」
私はこの時、初めて彼の気持ちに気づきました。
彼は音楽が大好きで、脳腫瘍になる前は、東京で仲間とバンドを組んでいたというだけあって、とても格好いい人でした。しかも誰に対しても優しくて、研修生の中ではアイドル的な存在だったので、私に向けられている視線が特別なものだとは思いもしなかったのです。でも思い返せば、私も彼と話す時間が一番楽しかったのでした。
かといって、どうしたらいいのか分からず、彼とは最後にメールアドレスの交換をし、これからも連絡を取り合う約束をして、私は愛知県に帰りました。
愛知に帰って間もなく、さっそく彼からメールがきました。なんでも東京に一時帰宅するついでに、名古屋に行ってみたいので案内してほしいとのことでした。私は少しびっくりしましたが、せっかくなので「いいよ」と返事をしました。
二人で名古屋の街を歩くのはとても不思議な気持ちでした。そして本当に楽しくて、心から楽しんでいる自分も不思議でした。一緒にいて、こんなに心地いい人は初めてだと思いました。一日中名古屋のいろんな場所をめぐって、帰る時間になり、彼を見送るため新幹線の改札へ一緒に行きました。
そのとき私は今まで感じたことのない寂しさに襲われました。そして、「私は彼とずっと一緒にいたい。私はこの人が好きなんだ」という心の声を感じたのです。あまりにもその声をはっきりと感じたので、私は突然その場で彼に打ち明けてしまいました。
彼は信じられないという表情で言葉を失っていましたが、お互いの気持ちを分かり合えたことがうれしくて、私たちはお付き合いをすることになりました。
彼も間もなく宇治での研修生活を終えて、東京に戻り、治療を再開することになっていたので、私たちは愛知と東京での遠距離恋愛ということになりました。
この時、私は彼の病気は必ず治ると思っていました。宇治にいた三カ月の間に、不治の病の人が治る話をたくさん聞いていたし、実際に何度も目の当たりにしたからです。「治るからこそ、私たちはこうして出会ったのだ」と信じて疑いませんでした。
ところが、東京に戻った彼の病状は少しずつ悪化していたのです。
出会いを聞かせて
[タイトル]
愛知と東京の
遠距離恋愛が始まる
飯田芳実
第3回
[本文]
無事に仕事も決まって、宇治別格本山の研修生を卒業する私に、彼は残念そうな表情で、
「本当に帰っちゃうんだね」
と言いました。
私は、あまりにも大げさに残念がる彼の様子にとまどいました。もちろん私も研修生の仲間と離れるのは寂しかったのですが、やっと自立して社会へ出られる喜びの方が大きかったのです。
最後に、研修生の仲間一人ひとりのメッセージが書かれた小さなノートを受け取りました。それぞれのあたたかなメッセージに感動しながら読んでいると、最後のページに彼からのメッセージが書かれていました。
「芳実ちゃん、あなたにはいつも癒やしと元気をもらいました。あなたは僕の天使です。本当にどうもありがとう。だから帰ってしまうのがものすごく寂しい。もっと一緒にいたい。でも心から応援し、幸せを祈っています」
私はこの時、初めて彼の気持ちに気づきました。
彼は音楽が大好きで、脳腫瘍になる前は、東京で仲間とバンドを組んでいたというだけあって、とても格好いい人でした。しかも誰に対しても優しくて、研修生の中ではアイドル的な存在だったので、私に向けられている視線が特別なものだとは思いもしなかったのです。でも思い返せば、私も彼と話す時間が一番楽しかったのでした。
かといって、どうしたらいいのか分からず、彼とは最後にメールアドレスの交換をし、これからも連絡を取り合う約束をして、私は愛知県に帰りました。
愛知に帰って間もなく、さっそく彼からメールがきました。なんでも東京に一時帰宅するついでに、名古屋に行ってみたいので案内してほしいとのことでした。私は少しびっくりしましたが、せっかくなので「いいよ」と返事をしました。
二人で名古屋の街を歩くのはとても不思議な気持ちでした。そして本当に楽しくて、心から楽しんでいる自分も不思議でした。一緒にいて、こんなに心地いい人は初めてだと思いました。一日中名古屋のいろんな場所をめぐって、帰る時間になり、彼を見送るため新幹線の改札へ一緒に行きました。
そのとき私は今まで感じたことのない寂しさに襲われました。そして、「私は彼とずっと一緒にいたい。私はこの人が好きなんだ」という心の声を感じたのです。あまりにもその声をはっきりと感じたので、私は突然その場で彼に打ち明けてしまいました。
彼は信じられないという表情で言葉を失っていましたが、お互いの気持ちを分かり合えたことがうれしくて、私たちはお付き合いをすることになりました。
彼も間もなく宇治での研修生活を終えて、東京に戻り、治療を再開することになっていたので、私たちは愛知と東京での遠距離恋愛ということになりました。
この時、私は彼の病気は必ず治ると思っていました。宇治にいた三カ月の間に、不治の病の人が治る話をたくさん聞いていたし、実際に何度も目の当たりにしたからです。「治るからこそ、私たちはこうして出会ったのだ」と信じて疑いませんでした。
ところが、東京に戻った彼の病状は少しずつ悪化していたのです。
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