忍者ブログ
ひでちゃんのこと。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ひでちゃんに最後に会ったのは病院でした。

急に連絡がとれなくなったと思ったら、病状が悪化し入院したということでした。
私はどうしても会いたくて入院先の病院へお見舞いに行きました。
東京には友人が住んでいたので泊めてもらうことにして。

ひでちゃんは思ったより元気な様子でした。
ただ薬の副作用で顔が腫れ、一瞬だれか分かりませんでした。
すぐにひでちゃんだと認識できなかった自分が情けなくなりました。

本当はこんな姿では会いたくなかったんだろうな・・

でもひでちゃんは相変わらず優しく、愛おしそうに私を見つめ、髪を撫でました。
その日はあまりしゃべりませんでした。
ただずっと手をつないでいるだけでした。

病院の屋上は自由に上がれて、ベンチに座ってゆっくりできるようになっていました。
病院の屋上からはディズニーランドが見えました。

まだ一緒に行ったことがなかったので私は

「退院したらディズニーランド行こう」

と言いました。

ひでちゃんは

「うん、退院したらね」

と言いました。

ひでちゃんのベッドからは海が見えてとても病院とは思えませんでした。

あっという間に面会時間が過ぎてしまい、私は友人の家に戻らなければなりませんでした。
病院の出口まで送ってくれたひでちゃんが突然に今までにないくらい強く私を抱き締めました。
私はものすごく切なくなり、嫌な予感がしました。


私を泊めてくれた友人はようこちゃんといって、お花屋さんで働いていました。
ようこちゃんはその日仕事だったので私はもう愛知に帰るつもりでした。

そうしたらようこちゃんが

「もう一度病院行ってきたら?」

と言いました。

「お見舞いにはお花を持っていかないと」

私はそういえばひでちゃんに何のお見舞いの品を持っていかなったことに気づいて

「じゃあようこちゃんのとこでお花買って行く」

ともう一度病院へ行くことにしました。

ようこちゃんが見立ててくれたお花のアレンジメントを持って私は再び病院へ行きました。



その花はずっと彼の傍らにあったようでした。

彼のお母さんがちゃんとドライフラワーにして入院中の彼に渡してくれたそうです。

一度退院し、すぐまた再入院したときも持って行ってくれたそうです。

彼は私と最後に会った約4ヶ月後に亡くなりました。

あのお見舞いが最期でした。

私はずいぶんと後悔しました。

なんでもっと頻繁にお見舞いに行かなかったのだろうと。

お葬式の日、彼の顔のとなりにあのお花がありました。

その時私は彼がどれほど私を愛してくれていたかが分かりました。

きっと私のかわりにこの花はずっと彼のそばにいてくれていたのでしょう。

彼も花を見るたび私を想ってくれていたのでしょう。

私は花の力というものを初めて知りました。

なんて儚いのに強いのだろうと思いました。

そしてあの時ようこちゃんがもう一度私に花を持って病院へ行くようにすすめてくれたのは

本当に神様の導きだったと思うのでした。
PR
◎ この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
10  11  12  13  16  17  18  19  20  21  22 
忍者ブログ [PR]