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ひでちゃんのこと。
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ひでちゃんが亡くなってから3日目のことだったでしょうか。

たまたま、誰かが持ってきた結婚式の引き出物かなんかの
かわいらしい絵とか文字がプリントされた角砂糖がおいてありました。

いつもはコーヒー飲むときはブラックなのですが
なんとなくその角砂糖を2、3個入れてみました。

ぐるぐるかきまわして、飲もうとしたら
カップにふわりとハートマークが浮かびました。



あ ひでちゃんだ。



最初のサインでした。
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ひでちゃんは病気になる前にバンドでヴォーカルをしていました。
わたしはその頃のひでちゃんは知りません。
でも彼のお母さんが彼がライブハウスで歌う姿が映ったDVDを下さいました。

その中にこんな歌がありました。


「I'm here」

風にのって 届いてるかな

この僕の想いは

ふわりふわりと ゆっくりでいい

君という大切な人へ



おたがい離れていても心は

通じ合っている

それはすごく難しいことで

だけど僕らならやってゆけるよ



あたらしい道へ旅立つ君へ

さみしい思いもあるけど

それ以上に心から見守っていたい



どうしようもなく君が

切なくなったその時にでも

僕はここにいるよ

うれしい時 悲しい時 つらい時

どんな時でも



君に渡したほんとの愛と

僕がもらったほんとの愛は

信じることと愛することの

ほんとの意味を教えてくれたね



泣きたい時は泣けばいいんだよ

君の涙さえも

僕がすべて受け止めるから

どうかこらえることはしないで



悩みなんて枯らしてしまえ

君の涙と一緒にすべて

今日という日をため息で

染めないでよ 明日が泣くから



幸せなんて見えやしないし

感じられない 決して触れない

だってそれは誰のでもなく

君の心が決めるものだから



共に支え合いながら

信じ合いながら

ゆっくりと 肩を寄せ合い

手をつないで これからもずっと



風にのせて 届けにゆくよ

この素直な想いを

ふわりふわりと ゆっくりでいい

君という大切な人へ

昔の日記が出てきて、ぱらぱらと見ていたら
びっくりするようなことが書いてあった。

5年前に書いたことなんだけど、すっかり忘れていた。


わたしのなかに、わたしの事が大好きな男の子がいて、
いつもいつも見守ってくれている。
いつもわたしに「愛してるよ」と言ってくれている。
このわたしのなかにいる男の子は、だれなんだろう。


こんなことを書いていた。
これを書いた時はほんとにわたしのなかにもう一人だれかいるって感覚が
ぬけなくて、それがなぜだか男の子だって気がして不思議でしょうがなかったのだ。
こんなこと人に言ってもしょうがないので、ひっそり日記にだけ書き付けておいたのだった。


この男の子はひでちゃんだったんだ。
ある時わたしの中からすっと出てきて、生身の人間として私を愛してくれて、
そしてまた、わたしの中へ帰っていったのだ。

最初からずっと一緒だったんだね。
ひでちゃんが亡くなって一カ月ほど経ったある日の朝、
出かけようと思ったら私の携帯電話の電池の表示が一個だけになっていました。

充電する時間もなかったのでしかたなく電車に乗りました。
その電車で隣に座っていた男性がヘッドホンで音楽を聴いていて、その音がかなり漏れていて、
聞くともなく聞いていたら突然ある歌詞がはっきり耳に入ってきました。

「ずっとあなたのこと大切だから」

彼が亡くなってからかなり神経過敏になっていた私はこの時点で泣きそうになりました。
さらに続いてこう聞こえてきました。

「気づいてほしい」

泣き顔をごまかそうと、携帯電話を開いてみたら
朝一個しかなかったはずの電池が満タンになっていました。

それから数日の間電池は満タンのままでした。
私は彼が存在を示そうと必死になっているような気がしてなりませんでした。

この現象は数カ月の間に何度も起こり
私は、ああ彼は確かに存在しているんだと、実感できるようになりました。

ある夜中に突然目が覚めたらカーテンの隙間からきれいな光が漏れていました。

満月の光が煌々と輝いていて、窓から月光を浴びているようでした。

次の日も、その次の日も、同じ時間に目が覚めて、

私は月光を浴びていました。

その光はひでちゃんの愛情のような気がしました。
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