ひでちゃんのこと。

いっぱい泣いてしまうのかな
その場に崩れ落ちてしまったらどうしようと
思っていましたが
大勢の人が涙を流す中、
なぜか涙はあまり出ませんでした。
 
ちゃんとひでちゃんの卒業を見届けることができたことに、
ほっとしたような、不思議な気持ちでした。
 
ひでちゃんが今日、私をここまで連れてきてくれたんだということを理解しました。
 
もし一人で愛知から東京まで行けと言われても、無理だったでしょう。
岡田くんが「一緒に行くよ」と言ってくれなかったら私は自分の家から一歩も出ることはできなかったでしょう。
 
その岡田くんのケータイになぜ直接メールが入ったのか。
メールを送信したはずのひでちゃんのお母さんもよく分からないと言っていました。
岡田くんにメールが行かなければ、たまたま東京にいた先生たちのところにその日のうちに連絡が行くこともなかったかもしれません。
 
ひでちゃんがいろいろと手配してくれていたんだと思います。
 
葬儀のあと、みんなでごはんを食べました。
食欲はありませんでしたが食べました。
 
清水さんが別れ際に
「二人ともきれいだよね」
 
と言いました。
最初はよく理解できませんでした。
私とひでちゃんのことを言ったようでした。
 
「きれい」という言葉はこういう時にも使うのかと
人ごとのように聞いていましたが
ずっとその言葉が胸に残ってリピートしていました。
 
「ああ本当に、きれいだったな」
と私も思いました。
 
清水さんが行ってしまったあと
私と岡田くんときこちゃんで皇居まで行きました。
なんとなくまだ帰りたくなかったので。
 
明るい日差しも、風も、揺れる木も、空も、鳥も
すべてがひでちゃんだと思いました。
 
私の中で時間がゆっくりと流れていました。
 
思い出を追うでもなく、先のことを考えるでもなく
今のすべてがひでちゃんだと感じました。
それをただ感じていました。
 
皇居のお堀には鳥がたくさんいました。
白鳥もいました。
私たちはゆっくりとお堀の周りを歩きました。
 
一羽の白鳥がずっと私たちの後をついてきました。
 
私はずっとその白鳥を見ていました。

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